はじめに
前回の記事(確定申告で源泉税が還付されるかも?)で、クリエイターの皆さんが受け取る報酬から引かれている源泉税の内容、源泉徴収の仕組み、確定申告との関係をご紹介しました。
今回は、具体的にクリエイターの皆さんが源泉徴収の対象となる業務への報酬を受け取った場合に、どうやって記帳処理をしたらよいかを見ていきたいと思います。
源泉税がいくらかってどうやって分かるの?
書類(請求書・支払明細書など)から分かる場合
記帳するといっても、そもそも「源泉税が引かれているのか?」「引かれている源泉税がいくらか?」を知らなければ処理することができませんが、これはどうやったら分かるのでしょうか?
事前に皆さんが正しく計算をして源泉税を明示した請求書をクライアントに発行している場合や、クライアントから、報酬の支払の都度、「支払明細書」などを受け取っており、そこに報酬の額と 差し引かれた(つまり皆さんにとっては「仮払い」した)源泉税の額が記載されている場合は、そこから金額を把握できるはずです。
また、支払いを受けた翌年の1月頃に支払調書が送られてくる場合があります(支払調書の「送付」は義務ではないので、ない場合はクラアントにお願いして送付してもらう必要があります)が、ここにはそのクライアントから1年間に支払いを受けた報酬の総額と源泉税の総額が記載されています。これがあると、確定申告の手間が減るのでぜひなくさずに大切に保管しておきましょう。
書類からは分からない場合
このように書類によってきちんと把握できる場合はよいのですが、問題は、皆さんが源泉税の対象となる業務を行った対価として、例えば現金で謝礼として10,000円もらった場合で、クライアント側で源泉が引かれているかどうかよく分からない場合です。
まずはクライアントに源泉税が引かれているかどうか確認しましょう。普通であれば、皆さんがもらった10,000円は源泉税が引かれた後の金額であるはずなので、その場合は、皆さんが記帳する報酬金額は、現金で受け取った10,000円に引かれた源泉税を足し戻した金額となります。
①皆さんがもらった金額(手取り) | 10,000円 | |
②皆さんの報酬(総額) | 11,137円 | ①÷(1-源泉税率(10.21%)) |
③源泉税 | 1,137円 | ②-① |
一方で、たまにクライアント側で源泉税が引かれていない場合があります。源泉税を徴収するのはクライアントの義務なので、皆さん側には何の問題もないのですが、この場合、確定申告はどうすればいいでしょうか?
もちろん、クライアントに言って直してもらえるのであれば、直してもらう(源泉税1,137円をおさめてもらう)のが一番良いのですが、直してもらえない場合は、上表の「②皆さんがもらった報酬(総額)」=「①皆さんの報酬(総額)」=10,000円、「③源泉税」=0円として確定申告するしかありません。
普通であれば、皆さんが受け取った報酬金額10,000円は源泉税が引かれた後の金額なので、これに税金を払う必要はないのですが、クライアント側で源泉税が引かれていない場合には10,000円に対して追加で税金を払わなければならない可能性もありますので、日々取引するにあたってはきちんと源泉税の対象となる業務かどうか、源泉税は正しく引かれているかどうか、など気をつけて報酬のやり取りをしましょう。
源泉税が引かれた報酬を受け取ったらどうすればいい?
では、源泉税の対象となる業務を行った際に、クライアントから報酬を受け取った場合にどうやって記帳したらよいかを確認しましょう。
源泉税は皆さんが仮払いした税金ですが、この税金は経費に入れることは認められていませんので、クリエイターの皆さんが受け取る報酬から源泉税が引かれ入金された場合、差し引かれた源泉税を「事業主貸」や「仮払金(仮払税金)」といった勘定科目を使って仕訳します。
例えば、10,000円の報酬が源泉税を引かれて支払われた場合は以下のようになります。
- 「事業主貸」で処理する場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
普通預金 | 8,979 | 売上 | 8,979 | 原稿料 |
事業主貸 | 1,021 | 売上 | 1,021 | 源泉税 |
前回の記事(確定申告で源泉税が還付されるかも?) で、源泉税は、皆さんが税金を「仮払い」したものであるということを説明しました。 つまり、源泉税は、皆さんが「事業とは関係なく」個人として前払いした所得税の一部なので、事業用資金を事業とは関係のない支払いに使った場合に用いられる勘定科目である「事業主貸」を使用して記帳することが一般的です。
また、皆さんが報酬を受けとった時点では(確定申告をしていないので)まだ確定していない所得税額であるという源泉税の性質に着目して「仮払金」という科目を用いて処理する方法もあります。
まとめ
- 差し引かれた源泉税は請求書、支払明細書、支払調書などの書類から把握できる
- 書類から把握できない場合はクライアントに確認する必要がある
- クライアント側で源泉が引かれていない場合は、受け取った金額=報酬、源泉税=0で確定申告する
- 差し引かれた源泉税は「事業主貸」で処理する
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